普通の日記コーナー

★04/11/09   弦楽器フェア 2004

今年も11月5〜7日に東京千代田にある技術博物館で弦楽器フェアが開催されました。今回は生徒さんや友人などを案内する関係もあって 土日の2日間行ってまいりました。ということで簡単なレポート、というほどのものでなく感想を書きたいと思います(^_^;)。


入ってすぐのところに私の楽器&弓の制作元である、ビオリーノ&アルシェさんのブースがありました。 去年はずいぶん奥の端だったので、今年はなかなか良い場所でしたね(^_^;)。楽器はリバースのファニオラモデルが2台おいて ありました。1台は濃い色で、隣に展示してあった本物のファニオラとそっくりなもの、もう一台は僕の楽器のような明るい色の 楽器でした。明るい色の楽器の方が弾きやすく感じましたが、濃い色の方がやや調子が悪かったものの楽器の質の高さを 感じました。特にD線のハイポジの音が良かったですね。弓は、アーティストモデルという、名演奏家のご愛用の名弓をフルコピー したものが展示してありました。中でも千住真理子さんご愛用のトルテをコピーした弓がとても良く、バランス、弾きやすさと音色が印象的でした。 弓の場合、本当にいいものは弾いた瞬間に「これいい!」と感じるんですが、この弓もまさにそうでした(^_^;)。

次に向かったのが楽器の調整などをお願いしている陳昌鉉さんのブースです。陳さんのヴァイオリン製作者としての歩みを つづったドキュメンタリー小説「海峡を渡るバイオリン」がTVドラマ放映されるということもあって、ドラマのポスターなどが 大きく張り出されていて会場の方々の目を惹いていました。みなさん、11/27(土)夜8時〜フジテレビは要チェックですよ(^_^;)。 土曜日はガルネリのカノン砲のモデルが1台とストラド型のモデルが2台、日曜日はストラド型のモデル2本が別のストラド型1本に 入れ替わっていましたが、ガルネリ型のと日曜日のストラド型の楽器はなかなか素晴らしいものがありました。音量があり、 音の深さとクリアさが魅力のガルネリ型、出来たばかりで少し荒さがあるもののガルネリ型以上の音量があり華やかなストラド型、 どちらもすさまじい底力を持った楽器だと思いました。

その後はいろいろ見過ぎてどれがどうだったか記憶が怪しいので(^^ゞ、印象的だったものを紹介してみたいと思います。

まずアウクスのカーボン弓。今までカーボンの弓は、「安いわりにはいい」「安価なモデルだとフェルナンブーコの弓よりも コストパフォーマンスが高い」「頑丈」、というようなイメージで、50万円以上のフェルナンブーコの弓とは比較出来るものではないと 思っていました。でもはじめて試したアウクスのカデンツァはカーボン弓のイメージを一変させてしまうくらい印象的でした。 弾いた瞬間に「これはいい!」と思いました。弓のレスポンスがとても良くて、自分の意志と音が一体になったような感覚です。 通常の弓よりも10gほど軽いそうですが、軽いからとかそういうことではなく素直に良い弓だと思いました。メイン弓としても 十分使えると思ったほどです。ちなみにこのカデンツァモデルは46万もするトップモデルだそうで、他のシンフォニアや コンチェルトというモデル(18〜28万くらい)のモデルはというと、その辺のフェルナンブーコ弓やその他のカーボン弓よりも 良いと思いましたがカデンツァほどの魅力は感じませんでした。ちなみにカーボンでもアウクスだけがドライカーボンで、 その他のメーカーのものはウェットカーボンだそうです。

ちなみに他のカーボン弓ですが、ヤマハのカーボン弓は思ったよりもしっかりしていて、普通の弓と持ち替えてもそれほど 違和感を感じませんでした。スピッカートというカーボン弓は今まで何度か試したことがあるのですが、あまり良い印象が なく、今回も相変わらず「ヌメっとした」印象でした。スピッカートは芯の強さを調整出来るらしいのでその辺変えてみないと 何ともいえないのかもしれませんが・・。グラッサーは3万円という超廉価版の弓で、見た目にもぼてっとしていて あまりよろしくなく、弾いた感じも落ち着きがなくてばたつきますが、3万円ってことを考えると十分かなと思いました。

弓はこれくらいで、あとは楽器ですね。印象的だったのは、フィリップ・クイケンさんの120万の楽器です。 少し古いオールドっぽい音でバランスのとれたとても良い楽器だと思いました。いつまででも弾いていたくなる楽器でしたね。 それから豊島継男さんのガルネリコピー。とても深い音でオールドらしい音がしていました。エドガー・ルスさんの 楽器はとても華やかで、カーンと鳴りながらも魅力のある音色をしていました。一度カーボンの弓で弾いたときは「あれ?こんなだったかな?」 と思いましたが、フェルナンブーコの弓で再度弾いたときにまた好印象を持ちました。やはり良い弓で弾かないとだめですね(^_^;)。 ヤマハのアルディーダは60万と90万のものがあるのですが、値段以上の差を感じました。60万のに比べて、90万の モデルの方は質の高さを感じました。アメリカのハイダさんの低価格ヴァイオリンの品質の高さにも驚きました。 12万円の楽器ながらとてもしっかりしていて、音の荒さ、力強さ、弾きやすさ、などのバランスがその値段からは考えられないほどの 楽器でした。これにはカルチャーショックを受けました(^^ゞ。最後はシャコンヌさんのところでアントニアッツィなどの モダン楽器を弾かせて頂きました。さすがに300万近い弓と1000万近い楽器の組み合わせなので、普通の新作楽器などと比べると ぐっと洗練されていて質の良いクリアな音で、楽に音がスッと飛んでいきますが、そうはいっても最近のモダンイタリィは高すぎますよね(^_^;)。

あと、弦の弾き比べコーナーは面白かったですね。試奏楽器がカンカン鳴る新作だったので、わりと落ち着いた弦の方が好印象で、 自分の楽器に全く合わなくて自分の中での評価の低かったコレルリヴィヴァーチェなどもオブリガートのような好印象でした。 でも自分の楽器に合わないと意味ないんですよね〜・・(;_;)。新製品のヴィジョン・チタニウム・オーケストラはなかなか 良かったです。片っ端から弾いてアンケートに答えていたら、後でヘリコアを送ってもらえることになりました(^_^;)。

今回は地下でのミニコンサートは聴きに行きませんでしたが(音響が悪いのでどの楽器の音もさびしく聞こえる)、 川畠成道さんがフェアのブースで試奏しているのを間近で聴くことが出来ました。チャイコフスキーのコンチェルトを 弾いていたのですが、ソリストというのはただ単に「上手い」だけではなく、やはり特別なものを持ってるんですよね! 川畠さんには音に人を惹きつける魅力があって、そういうものって上手いとかそういう言葉で片付けられないものがあります。

会場では初心者の方からプロの方まで様々な方が楽器を見て弾いて楽しんでいました。かなり上手な方もいらっしゃったのですが、 上手なのに猛烈にガンガン弓をたたきつけて狂ったように弾いている方が多かったですね。なにかこう楽器と格闘している感じで、 近寄りがたい雰囲気がありました・・・。でも中にはいましたね、魅力的な音を出してる人。 思わず聴き入ってしまいました(^_^;)。いろんな人がいて面白かったです(^_^;)。

ということで今回の収穫、というか特に目を惹いたものは、アルシェの千住さんトルテのコピー弓アウクスのカーボン弓「カデンツァ」陳昌鉉さんの楽器エドガー・ルスさんの楽器フィリップ・クイケンさんの楽器でした。他にもたくさんの楽器を見ましたが、 残念ながら手に取るチャンスがなかったものや、記憶にあったはずなのに忘れてしまった楽器、 素晴らしいのにたまたま自分の好みでなかった楽器、などまだまだあったと思います。

それと会場ではいろんな人と出会いました。久々に再会できた方も結構いて嬉しかったです。最近は引っ越しなどで 少し楽器から遠ざかり気味(防音の問題もあります・・・そのうちこれも日記のネタに)だったので、 久々にヴァイオリン三昧の2日間を過ごせて楽しかったです。また来年も行くことでしょう(^_^;)。


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