ヴァイオリンを弾いていると、しばしば「難曲」に出くわします。難曲とはあの植村直己氏が犬ゾリで
探検した地ではなく(寒・・)、技術的、音楽的に演奏が難しい曲のことをいいます。もちろん
超絶技巧を持ち、どんな曲でもやすやすと弾いてしまう人(五嶋みどりさんなど・・)にとっては
難曲は難曲でないのかもしれませんが、多くの人にとって(プロであっても)弾くのが難しい曲は
難曲と呼べるでしょう。
といっても自分が弾いたことのない曲はわからないので、弾いたことのある曲で難しかった曲を
挙げてみたいと思います。
まずはサラサーテの「カルメン幻想曲」です。これは5年前くらいに知り合いのピアノの先生の発表会で
ゲストで弾いたんですけど、ものすごく大変でした。サラサーテにしては右手が難しくないものの、
左手が大変です。とにかく重音が多くて3度、6度で速いパッセージが頻繁に出てくるし、ポジションの
跳躍も多いです。しかも後半に行けば行くほど難しく、自分でもよくあんなの弾いたな〜という感じです。
まああのときは時間があって、毎日5時間カルメンだけを2ヶ月弾いていたのでなんとかなったので
しょう。
同じくサラサーテの「序奏とタランテラ」。これはFMの演奏を聴いて(徳永二男さん)とても
しびれてしまって、まず弾けないと思いながらも楽譜を買ってしまったものです。最初はきれいな
メロディなのですが、タランテラに入ると猛烈な速度で3連符のスピッカートが続きます。
途中、1弦上4指のみでオクターブ上下の跳躍、最後には3オクターブのパッセージなどなど、
聴いて(見て)いる圧倒されます。弾く方はたまったもんではないですが(^_^;)。97年の海老名文化会館での
ジョイントリサイタルでアンコールに弾きました。ちなみに五嶋みどりさんのCDはテンポ126という
超人的なスピードで完璧に弾きあげていて、そのすごさに弾く気なくしたほどです(^_^;)。
次にヴィニアフスキから数曲。「スケルツォ・タランテラ」はひたすら左手のテクニックを求められる
曲で、テーマ途中の上行3連符レガートの連続や、中間部の1弦上レガートなど難所がいっぱいです。
少し前までとても弾けなかったのですが、この前チャレンジしました(本番)。でもまだまだなので、
さらに練習中です。「モスクワの思い出」は後半の和音の連続のところが大変難しいです。CDを聴いても
苦しそうな演奏が多いなか、諏訪内晶子さんのCDはテンポが速いのに全く苦しさが感じられず、
すばらしい演奏でした。「カプリースEs-dur」は
レガートとスピッカートの組み合わせが難しい曲です。特に後半が難しすぎて挫折したまま弾いてません(爆)。
有名な「カプリースa-moll Op.18-4」もテンポを上げるととんでもなく大変な曲になります。
「華麗なるポロネーズ」の第1,2番も大変な曲ですが、他に挙げた曲に比べると敷居は低いです。
クライスラーにも難曲があります。もともとクライスラーの曲は難曲までいかなくても難しい曲が
多いです。有名なだけに弾く方は大変だったりします(「愛の喜び」、「美しきロスマリン」、
「ウィーン奇想曲」など)。
難曲といえばやはり無伴奏の「レシタティーボとスケルツォ」でしょう。後半のスケルツォでは
速いスピッカートの連続、リコシェ(きわめて速いダウンボウでの連続スピッカート)など、
一時も休む暇もありません。その代わり演奏効果がとても高い曲です(ちょっとかじってそのまま・・)。
バッハの「無伴奏ソナタとパルティータ」も難曲でしょう。まだほんの少ししか手をつけていませんが、
いわゆるヴィルトゥオーゾテクニック(名人芸)は必要とされない代わりに、とても正確な技術が要求されます。
技術が課題になってしまうとバッハではなくなってしまうのです。音楽的にも難しいです。
難曲の代名詞といえばパガニーニ。今まで弾いたことあるどの曲もとても難しかったです。「ソナタe-moll Op.12」、
「ラ・カンパネラ」、「モーゼ変奏曲」、「カプリースNo.1,2,11,13,14,16,17,20,23」などに挑戦しましたが、
本番で弾いたのはうち半分以下です。ちなみにパガニーニの曲のうち弾いたことあるのは比較的パガニーニとしては
易しい部類に入る曲ばかりです(爆)。
とまあいろいろ挙げてみましたが、もしかしたら「この中には本当の超絶技巧曲が入っていない!」という人が
いるかもしれません。実はその通りで、本当の超絶技巧曲など僕など数小節も弾けないのです(^_^;)。
ディニークの「ホラ・スタッカート」、バッジーニの「妖精の踊り」、エルンスト「庭の千草変奏曲」、
パガニーニ「パイジェルロの『水車小屋の娘』の『わが心うつろになりて』による序奏と変奏曲」、などなど・・。
世の中には凄まじい曲があるものです。
ちなみに一見すると難しそうにない(たぶん聴いている人は難しく聞こえない)曲がモーツァルトです。
あの何気なく並んでるように見える音符を歌わせるのがどれだけ難しいことか・・。モーツァルトが
得意です!なんて一度でいいから言ってみたいです(^_^;)。
楽器を弾かず聴くのが専門の方も、こういうのを知っているとまた楽しみ方が違ってくるかも
しれませんね。