東京の一流コンサートホールで演奏を行っている一流演奏家はいざしらず、私のように
ホール、喫茶店、サロン室、公民館などさまざまなところで演奏している者にとっては
演奏会場の音響というのは非常に気になるものです。
ヴァイオリンは他の楽器に比べても会場の音響によってお客さんに伝わる音色が全く
変わってしまいます。同じように弾いたつもりでも「大きな音で迫力があった」
「音量が控えめに聞こえた」「とてもやわらかい音だった」「ちょっときつく聞こえた」
など会場によって同じ人が全く異なる感想を述べるのです。
もちろん弾き手側でもある程度は分かるので、とてもよく響いているとか、音が通らず
響いていないというのを感じながら弾いています。響きというのは弾き手の心理に
与える影響も大きいです。やはり響きの良いところで弾いているときはとても気持ちよく
自信を持って弾くことが出来ますが、響きのとても悪いところでは自分の弾いている音が
返ってこないために虚しい気分になり、自信を無くして弾いている最中にこの場から
逃げ出したいという衝動に駆られる時さえあります(当然演奏にも悪影響が・・)。
もっとも響かないところほどアラが目立つからというのもありますが(^_^;)。
弾き手側の努力として、響きの良いところでは力まないで丁寧に落ち着いて弾く、
響きの悪いところでは間延びしないようにして表現は派手目でダイナミクスを強調する、などと
いうところですが、いかんせん劣悪な環境では何をしてもダメという時もあります。
しかし弾く場所を選ぶ余地のない私は(基本的に来た仕事はどうしても都合がつかない
とき以外は引き受ける)どんなところでも弾かざるを得ないのですが、響きの悪いところ
で弾く時は独特の虚無感や孤独感に影響されることなくマイペースで弾くことを
心がけています。
とはいえ、聴きに来るお客さんは少しでも良い音で聴きたいものですし、私も良い音で
聴いてもらえたらと思っています。ちなみに私が今までソロで弾いた場所で特に音響が
良かったのは海老名市文化会館の音楽ホール(小ホール)です。他の音楽ホールに
比べても音響のよさは格別で、東京の有名なコンサートホールに匹敵するほどです。
数年に一度しか弾くチャンスはありませんが、とても素晴らしいホールです。
ホール以外では厚木駅近くのこーひー亭がとても音響が良くて気に入っています。
喫茶店なのでお客さんのお食事の音などが入ってしまいますが、お店の方の気遣いも
あってとても気分よく弾くことが出来ます。
逆に床がカーペットだったり壁に吸音加工してあるところは非常にデッドです。また
不思議なことに壁は平らで床も板張り、とても響きそうなのに全然響かないという
不思議なところもあります。しかしそういったところは演奏のアラが非常に目立つので、
練習には最適かもしれません。
さて今週末は、響きの良いこーひー亭でのコンサートなので、響きを十分に生かして
良い演奏が出来るように頑張りたいと思います。