パガニーニは伝説になっているイタリアのヴァイオリニストですが、当時彼のテクニックは悪魔的と言われるほどで、他に比肩する者がいないくらいの
ものだったそうです。自分のテクニックを披露するには現存の曲では空き足らず、自分のみが弾くことが出来る超絶技巧曲を
作曲し自ら演奏したといわれています。
彼の残した作品を見ればそのテクニックの凄まじさが想像できます。6つの協奏曲、24のカプリース、小品の数々・・・、どれも
難曲です。これら弾くだけでも困難な曲ばかり残したということが彼の技術の高さを示しているといえるでしょう。
そうはいっても以来誰もパガニーニの曲を演奏できないかというとそうでもありません。技術レベルが上がっている近年では
多くのヴァイオリニストがパガニーニの曲を演奏するようになっています。これには楽器の改良、演奏技術の合理化などが
あると思うのですが、特に最近のヴァイオリン技術の進歩はめざましいものがあります。五嶋みどりさんのカプリース全曲録音の
CDを聴いた時、おそらくここまで完璧に弾くことはパガニーニすら出来なかっただろうと衝撃を受けたほどです。
では演奏家としてのパガニーニが今では色褪せてしまうかというと決してそんなことはないでしょう。彼以来、悪魔と言われるほど
のヴァイオリニストは登場していませんし、ヨーロッパ中を熱狂の渦にまきこんだという人もいません。なにより多くの聴衆が涙した
というコンチェルト2楽章のアダージョを奏でる人はいないでしょう。
作品の話に戻りますが、私が初めてパガニーニを聴いたのはシュロモ・ミンツの弾く24のカプリースの全曲録音のCDでした。
当時とても人間が弾いているものだとは思えなかったほどの衝撃を受けました。それから数年後、先程の五嶋みどりさんの録音を
聴いてまた衝撃を受けました。そして十数年後の今、自分がそのカプリースと向き合っています。昔、超人にしか弾けるはずない
と思っていたころ(メンデルスゾーンやチャイコフスキーの協奏曲がやっと弾けるレベル)は全く歯が立ちません
でしたし、3年前くらいに挑戦した時も全くダメだったのですが、今は幾分かはマシになっているようです(この歳になっても
一応進歩があるのがうれしい)。とはいってもカプリースは私にとっては難曲集でしかなく(ちなみにパガニーニの曲にはもっと難しい曲が
たくさんあります)、24曲のうち4分の1でもレパートリーとして弾けるようになれば御の字かなと思っています。レッスン
受けたり練習したりしている曲もいくつかあるのですがレパートリーとなるとなかなか・・・。いつかNo.1をアンコールで弾いてやろうと
思っていますが、叶うかどうかはかなり怪しいところです(笑)。