ずいぶん前にこの日記コーナーで「ナイロン弦を斬る」、
新しい楽器での弦選びなどと称して
ナイロン弦についていろいろ書きました。あれからずいぶん時間も経ち、楽器の買い換えも含めていろいろな弦を試すことが出来たので
またレポートしてみたいと思います。
まず使用楽器ですが、以前は1800年代前半のオールドを使っていましたが、2003年7月に現在の新作楽器(ロッカのコピー)に買い換えました。
今の楽器は新作にしてはとても軽く、板が薄めに作られているためかとても反応の良い楽器です。強い入力は苦手のようですが、
その分音色の変化を付けやすく、表現力のある楽器です。音色は明るいですが、派手ではありません。
それともう一台、昔使っていたハンガリー製の楽器をレストアしました。ずっとしまったままだったのでネックは剥がれ、
カビも生えて無惨な姿になっていたのですが、ネック付け直し、ネック太さ調整、指板削り、ペグ交換、駒魂柱交換、
ニス塗り直し、などを経て見事に生まれ変わりました。
音も今の新作楽器に匹敵するほどの音量と響きになり、この楽器にこんな力が眠っていたのかとびっくりさせられるほどで、
サブ楽器として十分使える楽器となりました。板がかなり厚めで50年くらい前の楽器です。
ということで、少ないながらもこの2本で試した弦について紹介していきたいと思います。(以下、それぞれ新作、サブ楽器)
<ドミナント(Mittel)>
まずは普通のドミナント。新作とのマッチングはなかなか良いです。まず音量があり、独特のシャリシャリ音が音色に豊かさを
加えてくれます。反応の良さや弾きやすさはやや良い、といった感じです。ただ、寿命の短さはやはり気になりますね。
もう少しおいしい期間が伸びてくれればと思います。それと、余韻の短さも少し気になります。音が鳴っている間は
あまり感じないのですが、音の弾き終わり、ピッチカートなどでは余韻がすぐに止まってしまうという印象を受けました。
サブ楽器でも相性はまずまずで、とても力強い音になりました。
ただ、楽器自体に少し音の荒さがあるためか、ドミナントを張ると「荒い」という印象が強くなりました。
<ドミナント(Sterk)>
ドミナントのSterkですが、新作ではさらに音量が増し、非常に芯のある音になり、音が遠くまで通るように
なりました。バリバリ弾いても決して負けない弦ですね。反面、コントロールの幅が狭く、弾きにくくなってしまいました。
賞味期限が短いのも同じで、2ヶ月も経つと、こもってるだけなのに弾きにくいという非常に悪い状態に
なります。サブ楽器ではまだ試していません。
<インフェルド(赤)>
ドミナントに非常によく似ていていますが、ドミナントに比べると音の荒さがだいぶ落ち着いていて、
引き締まったような印象です。新作に張ると、芯が強い割には落ち着いた感じの音になるものの
少し固い感じがあり、やや面白みに欠けました。サブ楽器では、楽器の荒さがおとなしくなり、
芯の強い引き締まった音となり、ドミナントよりもこちらの方が相性が良かったです。
<インフェルド(青)>
インフェルドの赤を明るく軽くしたような弦です。芯の強さなどの基本的なところは赤と変わらないのですが、
少し味付けが違っています。私の新作はもともと音が明るいので、どちらかというと赤の方が相性が良かったように
思いますが、赤と青の違いは他の弦の銘柄との違いに比べると小さなものですね。ドミナント、インフェルド赤&青は
やはり基本特性がよく似ていると思います。寿命も短いですし・・。
<オブリガート(Mittel)>
新作では何度かこのオブリガートを試してみました。元々オブリガートは深くて味わいのある音がする弦なのですが、
楽器との相性が良いのか弾きやすくてとてもきめの細かい(Silkyとでもいうのでしょうか)音になりました。
弾いていても、独特の弾き味が心地良いです。バランス的にG線が弱いことと、少々音量が犠牲になってしまう
のが残念でしたが、音量を要求されないような場所で弾くのには良さそうです。
寿命は、ドミナント系に比べるとずいぶん長いように感じます。2ヶ月経っても本番以外でなら十分使えます。
<オブリガート(Sterk)>
オブリガートは音色は良いけれど、芯の弱さや音量の不足を感じたので試しにSterkを張ってみました。
音色の深さや弾き心地はそのままで音量と芯の強さが多少増してきました。これはなかなか良かったです。
力強さというのはさすがになく、ドミナントに比べると音量は落ちますが、弾きやすさと豊かな音色はやはり
魅力です。寿命はMittelと同じくらいでした。
<エヴァピラッツィ(Mittel)>
前のオールドの時のお気に入りだったエヴァピラッツィを新作にも張ってみました。前のオールドの時は、
ドミナントよりも音量、音色の豊かさ、クリアさ全てで上回っていたのですが、新作ではドミナントより多少良いかな、
くらいの印象となってしまいました。音量や張りはあるのですが、少し固い感じがしました。
ただ、この時期は楽器の調整をいろいろ行っていたので、調整が落ち着いた今、もう一度試してみないと
本当の評価は出来ないかなと思います。サブ楽器との相性はなかなか良かったです。
<ザイエックス(Medium)>
最強(テンション)の弦ザイエックスを新作に張ってみました。結果は・・・全然合いませんでした。以前のオールドでは
やや弾きにくいものの、その音量と張りは楽器の弱点をカバーしていて非常に良かったのですが、
新作ではテンションが強すぎて楽器が負けているのか、オブリガート以下の音量となってしまいました。
弦の強さは感じるのですが、全然楽器が響かなくてまるで使い古しの弦のような音でした。
調弦の狂いにくさや寿命の長さに優れている弦だけに、ちょっと残念でした。
<コレルリ・ヴィヴァーチェ・アリアンス(Medium)>
実はこの弦、日本で発売されるかなり前から海外から取り寄せて何度かテストしてました。
しかし結果は・・これもまた全然合いませんでした。寿命が長く、深い音色と輝きを持つ弦とのことでとても期待
していたのですが、弾きやすいものの全然楽器が響かないのです。弦をはじいてもまるで使い古しの弦のような
こもった音になり、弾いた音もザラザラしていていまいちでした。サブ楽器では幾分か良かったのですが、
なぜか同じような傾向で、オブリガートに音量、クリアさ、音色全てで劣る結果となってしまいました。
ただ、弦自体はかなり評判の良いようで、私の楽器との相性が悪かっただけのように思います。
オブリガートを若干強くして輝きを与えたような弦というコメントを良く目にしますね。
<トニカ(Mittel)>
ピラストロのナイロン弦では最も安価で比較的歴史の長い弦です。新作に張ってみたところ、なかなかの
好印象でした。ドミナントに比べるとわずかに音量が落ちておとなしくなるものの、自然に楽器が響く感じで、
弾きやすく、音色もとてもクリアでした。またドミナントのような荒さもなく、弾き心地はもやわらかく
感じました。以前から私の中で「安いのになかなか良い弦」という印象があったのですが、
使いやすくて良い弦ですね。サブ楽器でも試しましたが、楽器の音色の荒さが取れてなかなか好印象です。
<ヴィジョン(Mittel)>
トマスティークの新製品ヴィジョンを早速試してみました。今までトマスティークのナイロン弦といえば
ドミナントとインフェルドですが、このヴィジョンは久々の新製品ということになります。
まずは新作に張ってみました。印象は・・・かなりいいです!(^_^;) パッケージに書いてある
テンションを見る限りドミナントとほとんど同じ強さの弦のようですが、弦がしなやかに感じられて
反応も良く、とても弾きやすいです。音はドミナントをクリアにして深い響きを持たせたような感じで、
倍音が豊かでありながら音色の深さというものも持ち合わせています。派手さはドミナントに譲りますが、
トータルで考えるとこの弦の完成度はかなりのものだと思います。また、ドミナント&インフェルドは
弦の余韻というものがあまり感じられなかったのですが、オブリガートやガットのような余韻の長さを
持っているというのも良いですね。E線も他の弦に合わせてソフトな音色で、バランスも良いです。
サブ楽器でも近いうちに試してみようかと思っています。もう少しパワーとか芯の強さが欲しいですが、
最近の弦で一番のお気に入りです!(^_^;)
<ヴィジョン・チタニウム(Mittel)>
現在取り寄せ中です。手に入れたらレポートしたいと思います。ヴィジョンがとても良かったので
とても期待しています。
というわけで、最近試した弦についてまとめてみました。ヴィジョンの印象がとても良いのでチタニウムバージョンが
とても楽しみです。ちなみにこのヴィジョン、テールピース側の絹糸の色が、今までのドミナント&インフェルドのような
G線:黄、D線:緑、A線:水色、でなく、全て緑となっていました。ドミナントとの決別、という意思の表れなので
しょうかね?(^_^;) ちなみに袋にはいろいろな能書きが書いてありますが「長寿命」という文字が気になりました。
ドミナント&インフェルドは非常に寿命が短いという印象があったので、ホントかな?なんて思いますけどね。
またヴィジョンチタニウムが入ったらレポートしたいと思います。E線はステンレスにチタンコートを施したという
ハイテク弦らしいので興味津々です。金メッキのようにひっくりかえらず、かつ錆びない弦だったらいいなぁ。。(^_^;)
<ヴィジョン・チタニウム(Mittel)>(04/05/31追記)
ヴィジョン・チタニウムを入手したので試してみました。BBSにも少し書いたのですが、ヴィジョンの良さを
そのままにパワーアップさせたような素晴らしい弦です!
まずとにかくパワフルで、音量や音の張りはドミナントのSterkと同等かそれ以上のものがあります。
普通のヴィジョンではややG線などがやや弱い感じでしたが、チタンではフォルティッシモで大きな入力を加えても
負けないで音になってくれるところが良いですね。そしてヴィジョンの良い面である音色の豊かさ、響き、余韻の長さ
というところも持ち合わせています。さすがに弾きやすさや和音、ピアニッシモのコントロールはヴィジョンに譲りますが、
それでも「軽い弓」での反応の良さはドミナントSterkに比べたらずっと上です。
しかし、ヴィジョンとチタン、データ上のテンションはほとんど変わらないのにここまで
特性が違うというのは不思議です。しなやかで深い響きのヴィジョン、圧倒的なパワーのチタン、どちらも
良い出来の弦ですね。ちなみに、どちらか選ぶとしたら・・・やっぱりチタンです(^_^;)。
昨日、フランクのソナタのピアノ合わせをしてきましたが、とても印象が良かったので
7月のコンサート本番でもこのチタンでいきたいと
思ってます(^_^;)。
なお、E線に関してはあまり良い結果が得られませんでした。ステンレス&チタンコートという耐久性抜群の
組み合わせなのですが、金メッキのE線のようにひっくりかえりやすく、詰まったような音になって
しまいました。音色も硬い感じでした。でも、金メッキが合う楽器であれば良い結果が得られるかも
しれません(^_^;)。