普通の日記コーナー |
★03/07/18 出会いと別れ(楽器編)出会いは突然やってくる・・。別れもまた同じく・・。楽器との出会いや別れもまた・・・。 <出会い>
学生時代からの友人であるycさんに頼んで文京楽器にて楽器を探してもらったのですが、とても良い楽器が 見つかったとの連絡を受けてGW前にお店に行くことにしました。お店に着くと奥の部屋に通され、そこには たくさんの楽器が置いてありました。あれ?おすすめの楽器は?と思いましたが、お店の方に「まずは何も聞かずに 弾いてみて」といわれたので、とっかえひっかえオールドやら新作やらを弾いてみました。 当時、自分には楽器の知識などというものはほとんどなかったので、とにかく弾いてみてどう感じるか、 どういうものが好みか、というものを考えながらあれこれ弾き比べました。 しばらくしてお店の人が、「どれが好みでどれが好みじゃないかを分けてごらん?」というので、自分の気に入った 音の楽器を何本か選びました。すると好みでないといった楽器は下げられ、代わりに僕が選んだ楽器に傾向が似ている楽器を また持ってきて下さいました。そしてまた弾き比べです。そして4本に絞ったところで、ようやくその楽器の年代と 国について告げられました。50年前、100年前のイギリスの楽器、新作のイタリア、150年前のドイツ、の4本でした。 そしてさらに弾き比べ・・。そして最後に手にしたのは深い響きのドイツオールドでした。するとお店の方が、 「よかった!それが実はお話ししてたおすすめ楽器なんですよ!」とのこと(^_^;)。 さて一応絞れたものの、実は甘い音色のイタリア新作もちょっと気になっていました。そこでycさんにも来てもらい、 僕が弾いて聴き比べてもらったところ、「圧倒的にドイツオールドの方がいい!」という意見でした。 逆にycさんに弾いてもらって僕が聴き比べたら、確かに聞こえてくる音はずっとドイツオールドの方が響きのある 魅力的な音でした。この日はこのドイツオールドをお借りして帰ることにしました。 その後、いろいろなところでこのドイツオールドを弾いてみました。どこで弾いてもとても音色の評価が高く、 音に関しては全く不満がありませんでした。ただ、G線ハイポジのC音やA線1ポジのCの音にウルフと呼ばれる 現象が出ていて、その音だけひっくり返りやすいのが気になってきました。そこで、再度お店に出向き、 もう一度他の楽器(新たに仕入れた楽器などとも)と弾き比べをしたのですが、やはりこのドイツオールドが ダントツに良く、ついにこの楽器を買うことに決めたのでした。 それ以来、このドイツオールドといろいろなステージを共にしてきました。海老名市文化会館音楽ホールでの2度のジョイントリサイタル、 こーひー亭や海老名文化会館サロン室でのサロンコンサート、その他いくつものスクールコンサートやレストランでのBGM演奏、 オケのエキストラ、最近では調布や恵比寿、葉山などでも弾いてきました。自分が本格的に音楽活動をはじめるのと ほとんど同時期に手にした楽器なので、ほとんどの演奏活動を共にしてきたといっても過言ではないでしょう。 <弾き手の成長> とても良い音色の楽器なので、最初のうちはただ弾くだけで満足でした。普通に弾くだけで良い音色が出てくるのです。 また、弦やテールピースなどの付属品でとても音が顕著に変わる楽器だったので、いろいろ弦などを換えて楽器の 音色の変化を楽しみました。 しばらく弾くうちに、楽器の持つ音色だけではなく自分の音色を創りたいと思うようになりました。 とても弾き手に対してシビアな楽器で、弾き方によってとても音が変わりやすくごまかしが効かない反面、自分のコントロールが音に ストレートに出てくるので、どうやったらもっと良い音が出るか、弾き方を変えると音がどう変わるか、といったことを 意識して弾くようになりました。それが、発音、音色、表現などに関して自分が大きく成長していくきっかけになっていった ように思います。 自分が成長するにつれて楽器から出せる音も以前よりも幅広くなっていったのですが、自分が成長すればするほど 楽器に対する要求が厳しくなり、それまで気にならなかった音量、音の通りというものを求めるようになりました。 楽器から出ているのが良い音色であっても、それがお客さんに届かなければそれは良い音色には聞こえないわけです。 自分がいい音で弾きたいという自己満足から、お客さんにいい音で聴かせてあげたい、という風に変わってきたのです。 元々この楽器自体がアーチの大きめなオールドということで、あまり音量のある楽器でなくどちらかというと室内楽向け だったのですが、実際に共演する相手はほとんどグランドピアノであり、本番ではいつもピアノに蓋を閉めてもらって いました。少しでも楽器のパワーを引き出そうと、パワーの出る調整をしてもらい、弾きやすさを度外視した強いテンションの 弦を張り、気づくともう自分の要求が楽器の能力以上になっていました。 <新たな出会い、別れ そして・・> つい先日、6/21に文京楽器にて弦の弾き比べフェアに参加してきましたが、弾き比べが終わった後にycさんと文京楽器の 社長さんと3人でお食事をしてきました。その時社長さんに自分の楽器を見せて「この楽器、とても良い音色だけど音量がなくて」というお話しを したら、ついこの間出来たリバースのロッカモデルが素晴らしい出来だから一度見てみてはどうか、といわれ、後日見せてもらう ことにしました。リバースとは文京楽器さんのサイトでも このコーナーにて一部紹介されていますが、 名器の外観と音を様々な方面から再現しようという研究と、一流の職人さんの技術によって生まれた新作楽器のシリーズです。 最近製作されたモダン系の楽器のコピー(ファニオラモデルなど)の品質がとても高いそうですが、その中でも社長さんがその出来に驚いたという ロッカモデルを紹介してもらうことになったのです。 借りてきたロッカモデルを自分の楽器と一緒にいろいろなところに持って行き、弾き比べてみました。また、ちょうどその時に 東海大学オケのエキストラがあったので、ロッカモデルで本番を弾いたりもしました。このロッカモデルは弾けば弾くほど 素晴らしい楽器で、すっかり惚れ込んでしまいました。音色、パワー、響き、表現力、見た目の美しさ、など本当に 見事な楽器なのです。その後、荒川先生にも良い評価を頂き、そして最後はNatsumiさんにも、 その音をちょっと聴いただけでそっち楽器(僕の楽器)と比べる必要はないと思った・・、と言われるほどの 評価の高さでした。 もうほとんどこのロッカモデルの購入を決意したのですが、それは今までの楽器との別れを意味していたので、複雑な心境でした。 今の楽器を下取りに出さずにロッカモデルを手に入れられるほどの金銭的余裕はありませんでしたし、ロッカモデルと今の楽器との 能力の差を考えたら、おそらく今の楽器はずっとケースにしまったままになるのは目に見えていました。それは楽器にとって 不幸ですし、誰かに弾いてもらってその人の音色を育てていってこそ楽器にとっても幸せでしょう。そういう意味では 余裕がなくて良かったのかもしれません。。 自分が本格的に演奏活動を初めて以来、苦楽を共にしてきた今の楽器にはとても愛着がありました。でも、自分はこれから どんどん演奏活動をしていきたいと思っていますし、そのためにはこの素晴らしいロッカモデルを手に入れる ことが、どれだけこれからの自分のためにもなるかということがよくわかるのです。そしてそのようなチャンスに恵まれたことが いかに幸運であるかということも・・。 今の楽器には6年かけて音色を育ててもらい、たくさんのことを教わりました。でも、もう十分学んだかなとも思います。 自分のためにも、これからこの楽器に出会う人のためにも、今まで連れ添った楽器を手放すことに決めました。 楽器にお別れをする前夜、今までになく楽器を弾きまくりました。自分の目、耳、手にその楽器の感触を刻み込むかのように・・。 そして最後にタイスの瞑想曲で弾き納めをしました。そのあとは一緒にお風呂に入り、というわけにもいかないので(^_^;)、 記念に写真を何枚も撮りました。 次の日、朝起きるとまず「今日はお別れの日」というのが浮かんできて、ちょっと涙が出そうになりました。。なんだかその日は 一日中落ち着かなかったのですが、意を決してお店へ・・。お店に着くと生徒さんの弓選びが始まっていて一緒に見たり弾いたり。 なんだかそちらに時間を取られてしまって、社長さんには「また今度でいいよ」のように言われたのですが、「昨日、楽器とお別れ してきて、気持ちの整理を付けてきたので、置いていきます。」といってお別れしてきました。。
というわけで、楽器の買い換えごときで何故にここまで感傷的になるのか? と言われそうですが(^_^;)、このようなわけで 新しい楽器に買い換えました。これからまたいろいろなところで弾いていくと思いますが、この力強いパートナーと共に どんどん活動を広げていこうと思います。このロッカモデル、弾けば弾くほど本当に素晴らしい楽器だと実感しています。 もう早速あご当てもCrowsonのルジェーリ型を取り付け、弦もオブリガートに張り替えました(^_^;)。とても惚れ込んで しまった楽器なので、これからいろいろなところでこの楽器と一緒に演奏していきたいと思っています。 |