バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタとパルティータはいわずとしれた名曲ですが、この曲はおそらく聴き手以上にヴァイオリン弾きにとって
とても大きな存在であるように感じます。「バッハ」という言葉に何か特別な力があるのではないかと思うほど、「バッハを弾く」ということに
特別な思い入れを感じてしまう人も少なくないでしょう。というか、「バッハを弾く」という言葉を「バッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータを弾く」
という意味に脳内変換してしまうのは、ヴァイオリン弾きだけでしょうね(笑)。
さてそんなバッハですが、数十年前と今では演奏スタイルが大分変わってきているようですね。少し前まではバッハといえばシェリングの演奏がバイブルとされてきていて、
音の始まりから終わりまでしっかりと弓圧をかけて弾くような濃厚で緻密な演奏が好まれました。ヴィブラートもたっぷりかけ、淡々としたリズムで、
弓の返しが目立つくらいに音の端から端まで均一に鳴らし、3〜4和音などではメロディラインを強調するために和音を弾ききった後に弓を戻したりなど・・。
しかし最近ではバッハの原点に返ろう、バロックを見直そうという動きがあり、バロックヴァイオリンでのバロックスタイルでの演奏が見直されています。
そしてモダン楽器の世界でもバロックの音楽表現、奏法を採り入れたスタイルが広まりつつあります。速めのテンポと動きのあるリズム感、
控えめなヴィブラート、軽めの弓圧と速い運弓から生み出される独特の響き、一つ一つの音の重みよりも流れと響きに重点をおいているように感じます。
でもその程度というか、昔ながらの重厚奏法とバロックの奏法の間のどこに位置するかというのは人それぞれのようで、最近録音されたいろいろな
CDを聴いてみると違いが面白いですね。
というわけで、以前の日記ともダブる部分もありますが最近聴いたCDを少しご紹介。
<バロック楽器による演奏>
まずは本家のバロックヴァイオリンからですが、レイチェル・ポッジャーの演奏は、クリアな響きと淀みないテンポが実に素晴らしいです。
技術も相当高く、聴いていて物足りなさというものは全く感じません。また奏法はバロックそのものなんですが、
音楽はどこか現代的というか新鮮さを感じるのが面白いです。バロック演奏としては現在一押しです(^_^;)。シギスヴァルト・クイケンの演奏はこれぞバロックという演奏ですが、
ポッジャーを聴いた後だと正直、技術的なキレにおいて物足りなさを感じてしまいました。ルドルフ・ゲーラーはバッハ弓といわれる
湾曲弓を使った貴重な演奏ですが、ソナタ1番のアダージョの出だしで4和音が同時に鳴り響いているのを聴いたときはカルチャーショックを
受けました(^_^;)。ピッチが現代と同じで、表現もあまりバロック風ではないのですが、非常に貴重な録音で一度は聴いてみる価値がありますね。