ここでいう接触点とは弓の毛が接する弦の位置のことです。最も基本的な位置は 駒と指板の端との中間点になります。もっともバランスの良いしっかりとした豊かな 音が出ます。ヴァイオリンを弾いていて音が不明瞭だったりざらついているときは 接触点が大きくずれていることが多いです。特に左手が複雑なフレーズなどでうまく いかないときなど接触点を確認するとあっけなく解決するときも・・・。 接触点が知らず知らずのうちに指板側に移動してしまう傾向の方をよくお見かけします。
また、初心者に多いのが弓先で接触点が指板寄りになってしまうパターンです。原因は前項の 弓の向きにあるのですが。ただでさえ重さの乗らない弓先ですから、ますます音が痩せてしまいます。
接触点は音色に非常に大きな影響を与える重要なものですが、応用としてあえて 基本の位置(駒と指板の中間点)から駒寄り、指板寄りに動かすことでさまざまな 音色を生み出すことが出来ます。駒寄りを弾くと倍音の多い堅い音になり、指板寄り を弾くと弱くて柔らかな音になります。これは通常は演奏者が自身の求める音に応じ て使い分けます。例えばやわらかい響きのある音がほしいときには指板寄りで 弓の圧力を抑えて弓の速度を上げるとふわっとした音色が得られます。しかし作曲者 がこの接触点をあえて指定している場合もあります。Sul Tastoは指板寄り、 Sul Ponticelloは駒寄り。
その他にも接触点を使った応用があります。たとえば付点4分音符と8分音符が 交互に繰り返される音形をイメージしてみてください。付点4分をダウン、8分を アップで弾くとなると、短い時間(1/3)に弓を速く動かす8分のほうが音が大きくなって しまいます。こういう場合、付点4分音符は駒寄り、8分音符は指板寄りを弾くこと で(つまりダウンとアップで接触点をずらす)音量を一定に保つことが出来ます。