今度は弓の接触点、圧力、速度の関係を考えてみます。まずは簡単に音量と それぞれの関係をまとめてみました。
音量 | 接触点 | 圧力 | 弓の速度 |
---|---|---|---|
フォルテ | 駒寄り | 強め | 速め |
ピアノ | 指板寄り | 弱め | 遅め |
と、まあこんな具合になります。しかしフォルテの時=駒寄り&強め&速め、 ピアノの時=指板寄り&弱め&遅め、と単純にしてしまってよいのでしょうか? 試してみるとわかりますが、おそらくフォルテでは音量はある程度出るものの 音がつぶれてしまいノイジーな音に、ピアノでは音量は抑えられるもののなんとも 情けないか細い音になってしまうでしょう。これは接触点、圧力、弓の速度が 複雑にに関係しあっているからです。これをまとめると、
接触点 | 弓の速度 |
---|---|
駒寄り | 遅め |
指板寄り | 速め |
圧力 | 弓の速度 |
---|---|
強め | 速め |
弱め | 遅め |
となり、上の二つの表を見比べると???となりますよね。つじつまが 合いません。それではどうしたら良いのでしょうか? 答えは簡単、練習の 積み重ねによって見つけ出してください、なんていうのではこれを書いている 意味がないので、簡単な例をいくつか示したいと思います。弓の角度も含め、 今までのを総合して書いてみました。陥りやすい例なども加えてあります。
例 | 弾き方 |
---|---|
ロングトーンでのフォルテで弓が足りない、音が出せない | これはオケ曲等に多いですが、 弓をゆっくり動かさざるを得ないのにフォルテあるいはフォルティッシモと 書いてあるとき、なんとも苦しい思いをします。こうした時、弓の速度は長い音を一弓で弾く ため遅くなりますが、その分、弓を立てて圧力をかけ気味にして駒寄りを弾くと幾分かは 音量を引き出すことが出来ます。もちろんやりすぎは禁物ですので音がつぶれてしまわないように。 |
ピアノになると音が死んでしまう | ピアノで音が死んでしまう場合、大抵は弓の速度が落ちすぎています。ロングトーンで仕方ない場合もありますが、そうでなく メロディックなフレーズの場合は弓の圧力を極力抜き、接触点は指板寄り、弓を寝かせて、 弓が弦の上を滑走するようにすっと弾きます(弓の速度を速く)。 するとフラジオレットにも似た独特の響きを創ることが出来、豊かな透明感のあるピアノを得ることが出来ます。 |
緊張するとアタックやスピッカートで弓が弾みすぎて落ち着かない | 右手に力が入っていたり、弓を高く弾ませすぎていることが多い(低空飛行を心がければ解決)ですが、単に弓を少し寝かす だけで弓は弾みにくく落ち着きます。逆に弓を跳ばしたいのに跳ばない場合は弓を立て気味にすると良いです。 (注・・これはあくまで応急処置的方法です。本番直前で人の弓を借りた時、本番中に緊張して手が震えてどうにもならない、などの時に 用いるべきであって、普段の練習ではこれに頼らない方が良いでしょう) |
フォルテの後の急激なピアノで勢い余ってしまう | ベートーヴェンなどによく登場する、フォルテあるいはクレッシェンドしてきての急激なピアノ(subito p)は、わかっていても つい勢い余って音が殺しきれなかったりします。そういう場合はフォルテの後、圧力を抜くと同時に接触点を指板寄りに移すことで 幾分緩和することが出来ます。 |
速いパッセージをデタッシェで弾くと音が不明瞭になる | まずは右手と左手を合わせること(左手に右手を合わせる練習をする、運指とボウイングを分ける練習など)、 弓を立てる、あまり指板寄りを弾かない、などが効果的です。 |
※デタッシェ : 跳ばさず一つ一つの音で弓を返す普通のボウイング
ヴァイオリンを弾く上ではただ音を大きくや小さくでなく、音色や響きなど音に要求される 要素が多く、これらのバランスをいろいろ変えてあげることでさまざまな音を創り出す ことができます。