ステロイドとは、本来人体の副腎皮質で分泌されているホルモンを人工的に作り出した薬剤で(正確にはステロイド剤)、 ヒスタミンによって引き起こされた鼻の粘膜の炎症、目の結膜の炎症を鎮めます。また免疫系など組織の 反応性を低下させる作用を示し、アレルギー反応も抑える働きをします。 効果は非常に強力で、花粉症だけでなく多くの疾患での最後の切り札的な存在です。
主に点眼、点鼻薬として使われていますが、症状の重い場合は内服薬のセレスタミン(抗ヒスタミン薬との配合剤)なども広く使われています。 純粋なステロイド剤であるプレドニンも使われることがありますが、5mg錠ではセレスタミン錠のほぼ2倍のステロイドの強さに相当します。 ただし、セレスタミンに含まれるベタメタゾンは長期作用型、プレドニンは中期作用型のため、プレドニンの方がピンポイント的に使いやすいともいえます。
効果は非常に強力で、抗ヒスタミン薬に比べても明らかに症状の改善がみられます。 抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬でほとんど症状の改善がみられなかった重症の方でも効果が期待できます。 自分が花粉症であることを忘れてしまうことすらあります。ただし、抗ヒスタミン薬ほどの即効性はなく、 効果が現れるまで1〜2日を要します。(セレスタミンは抗ヒスタミン成分が配合されているので即効性あり)
強力な効果を持つ反面、ステロイド剤には強い副作用があります。本来体が持っているホルモンを人工的に与えることになり、 体の様々な機能のバランスに影響を与え、感染症、胃潰瘍、骨粗鬆症、抑鬱、その他様々な副作用が生じ、 長期大量投与後に急に中断したりすると副腎の萎縮によるリバウンドの危険もあります。 花粉症で使用する程度の量であればあまり心配しすぎることはありませんが、あまり長期に渡っての使用は控えた方が良いです。
いずれにせよ、花粉症では少量のステロイドにとどめるのが通常で、セレスタミンであればセレスタミン錠x1〜2錠/日、 プレドニンならプレドニン5mg錠x1錠/日、程度で十分な効果を発揮します。
点眼、点鼻に使う分には短期間であればあまり気にしなくても良いようですが、やはり長期に渡っての使用は避けた方が無難です。 目や鼻の感染症、鼻の粘膜が弱くなったり、緑内障の原因になることもあります。
怖がりすぎる必要はありませんし、花粉症の症状が重い場合には使用した方が良いことも多いです。 どんな薬でもそうですが、基本的に薬は「効果>副作用」と判断できるときに使用するものです。 副作用のリスクを避けるためにはなるべく短期間でピンポイント的に使用し、漫然と使用しないことが必要です。
ステロイドには内服、点眼、点鼻の他にケナコルトA筋注、すなわちステロイドの注射がありますが、これは慎重に慎重を重ねるべきものです。 注射一本で花粉症シーズンを楽に過ごせる、との触れ込みで一時期流行りましたが、ステロイドの注射は内服に比べて はるかにリスクが高いということを理解しておく必要があります。
ステロイドでも内服薬であるセレスタミンなどは、服用して数日で代謝により薬剤が体から出ていきます。 そのため、花粉の飛散量に合わせて数日単位でステロイドの量をコントロール出来ますし、 万が一思わぬ副作用が出たときも服用をやめれば最悪でも副作用はその数日間だけで済みます。 しかし注射はそうはいかず、効果が1ヶ月持続する代わりに副作用も1ヶ月続きます。 重篤な副作用が生じた場合も薬が排出されるまでの1ヶ月、常に副作用に悩まされることになります。
そのため日本アレルギー学会でも「花粉症に対するステロイド注射は望ましくない」ということを警告しておりますし、 余程特殊な事情でどうしても必要ということでもない限り安易なステロイド注射はすべきでありません。 使用にあたっては医師から十分な説明を受け、リスクについてもよく話し合うことが不可欠です。
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